北奥法律事務所

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民事一般

いじめ問題や学校事故に関する第三者機関と弁護士の役割

数年前、著名ないじめ事件の第三者委員会などに関与された先生の講演、報告などを内容とする勉強会が弁護士会で行われ、参加したことがあります。

私自身はいじめ絡みの問題に業務として関わったことはありませんが、関心の強いテーマでもあり、講師の先生が経験された様々な事柄について興味深く拝聴してきました。

「いじめ防止対策推進法」の制定により、いじめ問題で重大な事態が生じた場合には学校側に調査及び情報提供義務が課されたため(28条)、現在は設置されるのが通例となっているのではと思います。ただ、欲を言えば、重大事態の発生前の進行段階から、関係者のSOSや通報などに基づき、相応の事案では迅速かつ当事者にとって低コストで第三者が介入するような仕組みが設けられるべきではないかと思います。

この点については、講師の一人である仙台の先生から、第三者委員会の委員としての報告のほか、「宮城県内の学校の管理担当者の方々に講演する機会があり、未然防止のための早期介入の必要について提言し、弁護士会との連携などについて理解を得た」とのお話があり、羨ましく感じました。

ところで、いじめに限らず学校を巡って訴訟になるケース(いじめ、体罰、各種スポーツ事故、施設の問題に起因する事故など)は非常に増えており、最近の判例雑誌にも多数掲載され、私が作っている裁判例データベースでも多数の例を勉強し、入力しています。

これらの問題に関する裁判例を広く集めて賠償責任の当否に関する判断要素などを詳細にまとめた書籍も刊行されており、当方でも、例えば、引用の書籍などを購入しています。
青林書院|書籍詳細:学校事故 判例ハンドブック (seirin.co.jp)

著者の坂東先生は損保大手の顧問弁護士として高名な方で、学校を被保険者とする賠償責任保険などの関係で多数の裁判に従事された経験を踏まえて執筆されているのではないかと思われます。

学校を巡っては、生徒側が被害者となるケースだけでなく、教員側が被害者となる事案(生徒集団が起こした学校崩壊に起因するメンタル疾患や教員間のトラブル、いわゆるモンスターペアレント問題など)もあり、様々な論点があるほか、複数の問題・論点が混在してトラブルが一斉に吹き出すケースもあると思います。

そうした事案への対策も含め、学校を取り巻く各当事者が違法不当な取扱いを受けて長期間、苦しむことのないような、被害の未然防止や事後救済の仕組みが構築されるべきだと思いますし、私自身、そうしたものにお手伝いできる機会があればと願っています。

岩手でも滝沢市や矢巾町で残念な事件が生じたことがありますが、弁護士に限らず、教育現場・関係者に対し「一杯一杯の状態にある当事者」をさらに追い詰めたり足を引っ張るのでなく、適切にフォローできるような態様で支援できるようなシステムの構築や機会の増進にご尽力いただければと思っています。

 

建築訴訟を巡る一国二制度と訴訟実務の行方

3年ほど前、最も苦労した事件の一つに、岩手県内のある住宅の新築工事の瑕疵を巡る訴訟があります。

施工業者側(瑕疵を理由とする賠償請求を受ける側)で依頼を受け、幾つかの工事項目で、住宅建築に関する細かいルールの抵触の有無が問題になりました。

が、依頼主たるご年配の施工業者の方は、「自分はフラット35(公庫仕様住宅)の仕事はしたことがない」と仰るなど、現在の建築基準法令やそれを取り巻く実務ルールの詳細にさほど明るくない(悪く言えば、昔の知識で仕事をしている)ように見受けられ、論点に関する説明(相手方の主張への反論)をお願いしても、得心できるご返事がなかなか得られませんでした。

幸い、現代にはインターネットという有り難い武器がありますので、自分なりに建築用語をあれこれ調べて「この点(工事項目)は瑕疵ではない=きちんとした工事だと貴方が仰っている理由は、要は、こういうことですか」と、私の方でそれなりに理屈をどうにか揃えて書面を作成し依頼主の確認を求める作業の繰り返しとなり、相手方の言い分(事実関係から法令等のルールまであれこれ)を理解するための作業も含め、他の訴訟の何倍も消耗を要する作業が続きました。

私は本格的な建築瑕疵訴訟を経験したことはほとんどないものの(工事代金を巡る業者間の紛争など工事絡みの訴訟は数多く経験しています)、東京時代に建築瑕疵が絡む訴訟は若干ながら関わったことがあります。

東京地裁では、建築系の訴訟は当時(平成14年前後)から、訴訟の早い段階で問答無用で調停手続に廻され、建築士の方の主導で技術的な論点に関する整理が行われています。私も当時、それをもとに早期に調停案が示されて合意し終了、という経験を1~2度しており、本件も、事案の性質や当事者の実情などから、調停手続に付していただいた方が良いのでは、と裁判所にも申し入れました。

しかし、その件の担当裁判官は、ご本人の口ぶりなどから建築紛争に豊富な知見をお持ちらしく、調停は必要ないとした上で、概ね当事者の主張立証を尽くさせた時点で、この論点は当方(被告)の主張を認めるが、この論点はダメ、などと口頭で結論を伝え、それを前提に和解勧告として特定の金額の提示をするという対応(訴訟指揮)をしてきました。

それまでの当事者とのやりとりなどから、「この論点は厳しいのでは」と薄々感じていた論点については特に異存はなかったのですが、中には、当該工事に関する技術的知見に精通する建築士の方の意見を伺いたかったという争点もありましたので、結論自体は恐らくやむを得ない範疇なのだろうとの印象は持ちつつも、生煮え感というか、納得という点では残念な面がありました。

といっても、建築調停(建築学などの知見が問われる場合に建築士を交えて、その知見を生かして争点整理や和解勧告を行う調停)を行わないという事象(訴訟指揮)は、この裁判官の方に限った話ではありません。

恐らくは、地方(小規模)の裁判所では、ごく当たり前のことである=言い換えれば、建築調停は、実際には十数年以上前から現在まで一貫して、大都市だけの制度になっていると思われます(そのような話を聞いたことは何度かあります)。

既述のとおり、この訴訟の担当裁判官の和解勧告(結論)自体は、両当事者にとってやむを得ない(受け入れざるを得ない)範疇のものと理解しているのですが、当方が提起した論点(ご本人のごく抽象的な説明を建築の素人である私があれこれ調べてまとめた論点であり瑕疵訴訟の一般的文献には全く記載のない、建築分野の固有の論点)について、結局は納得できる説明は得られなかったとの気持ちがあり、曲がりなりにも建築士の方が関与していれば、多少とも裁判所の判断を得心できたのにと、残念な感じがしてしまいます。

少し前の判例タイムズに、東京地裁が行っている建築瑕疵訴訟の審理モデルに関する論考が掲載されてましたが(1454号4頁)、相変わらず、東京地裁では建築瑕疵訴訟では調停手続を行うのが至極当然という書きぶりとなっており、「いつまで、こうした一国二制度状態を続けるのだろう、最高裁はその状態が続くことが平気なのか?」と思わざるを得ません。

もちろん、このような「大都市と地方の取扱(訴訟の審理方法)の違い」は国民一般に知られているものではなく、まして国民に支持されているものでもありません。

裁判員制度に関しては、曲がりなりにも各都道府県で一律の仕組み(サービス?)を用意している裁判所も、建築瑕疵紛争のほか幾つかの類型では、大都市と地方とで審理の仕方などが異なるという実情を放置しているように見受けられ、それで良いのだろうかと感じてしまいます。

医療訴訟や知財訴訟など専門特化が著しい領域では、裁判所(専門部)が要求する水準で直ちに仕事ができる弁護士自体が限られているため、相応にやむを得ない面があるのかもしれませんが、少なくとも建築関係訴訟には、そこまでの事情はないはずです。

どちらの手法が良いのかという点はさておくとしても、東京等で生じた建築瑕疵紛争と地方都市で生じたそれとで、「司法の手厚さ」が違うことが常態化するのであれば、それは国民とりわけ地方在住者の司法へ信頼を損なうことに他ならず、関係者には熟慮と行動をお願いしたいところです。

私と岩手県庁の20年、そしてその先にある事件

19年前、私は、岩手・青森両県庁などのご協力のもと、全国の廃棄物問題の凄腕弁護士さん達を連れて、岩手青森県境不法投棄事件の現場に行きました。第二の豊島事件になるかもしれないと思われたこの事件は、増田知事の全面撤去の決断を機に、弁護士の出番を必要とすることなく決着しました。

14年前、岩手・青森の海の境界紛争と呼ぶべき「なべ漁場事件」が勃発し、私は、岩手県庁(水産振興課)の全面支援のもと多数の岩手県漁業者の代理人として、青森県庁と闘いました。数十年前から続いていた漁業紛争にケリを付けるため始まった事件は、苦心惨憺の末、実質勝訴と言える和解で終了しました。

7年前、長年の岩手のサケ産業システムに不満を持つ一部の岩手県漁業者による「サケ刺網訴訟」が勃発し、私は岩手県庁(水産振興課)の代理人として原告漁業者らと闘いました。この件も苦心惨憺の末、3年後に全面勝訴で終了しました。

ただ、岩手のサケ産業の現状に照らせば、ある意味、勝者なき闘いだったのかもしれません。彼らが数十年続けた闘争を終わらせるために起こしたのではと感じた訴訟は、裁判で語られたことの意義が世間に伝わることもなく、些か不毛さを残すものでした。

あくまで単発的なご依頼であり「地元の大物センセイ」でもありませんので、県庁の顧問などにご縁はありませんでした。

そして今、数十年前に行われた廃棄物の大量埋設事件で、被害者代理人として、岩手県庁(医療局)を訴える側の代理人として訴訟を提起しました。

自治体と関わる地元弁護士は数多あれど、こうした形で地元県庁と様々な関わりを持った弁護士は、珍しい部類に入るかもしれません。

提訴自体は、当日は地元TVで全局一斉に取り上げられたほか、国内向けWeb記事でも表示されていました。
軽米町が県を提訴 病院跡の廃棄物めぐり 総額1億9000万円の損害賠償請求<岩手県>|FNNプライムオンライン

反面、翌日の岩手日報では紙面の片隅に小さな記事が載っているだけでした。新聞には、訴訟の概要や事件の問題点などについて、提供資料などをもとにTVでは対応できない腰を据えた詳細な記事を書いていただければと願っていたのですが、その点は残念です。

ともあれ、この事件は数十年前に埋設された膨大な廃棄物の撤去費用などの賠償を埋設行為者に請求する事件ですが、以前に投稿した「あなたの街の森友学園事件」のとおり、全国に膨大な数の同種被害が潜在していると危惧されます。

とりわけ、数十年前とはいえ県庁が運営していた施設が起こした事件であることは関係証拠から間違いなく、県庁が県民から借りた土地に、現時点で1億強もの原状回復費用を要する投棄行為を行い放置し続けたことの当否を問うことは、県民にとっての県庁という存在の意味=信頼も問うことに他ならないと思っています。

本件自体の解決もさることながら、将来発覚する同種の事件で適切な対処がなされるようにするためにも、全力を尽くしていきたいと思います。

事件の適正解決のため、県民など多くの方々のご理解・ご協力も賜れれば幸いです。

裁判所による手続的虐待?の光景とマチ弁の愚痴(後)

前回、表題の内容で仕事の愚痴(家裁で酷い目に遭っている話)を延々と書かせていただきました。

恥ずかしながら、この件をfacebookに投稿したとき、家裁から「こんな事件で、なんでそんなことまで延々と要求されるのか」という理不尽感が積もり積もって軽い適応障害(鬱気味)を起こしており、誰かに話を聞いていただかないと身が持たないと感じ、恥ずかしながら投稿した次第でした。

幸い、ご覧になった方から暖かい反応をいただいたほか、家裁実務に精通されている本職筋の方からも、私が「こうあるべき」と考える方針を概ね支持する(それが家裁の通常の取扱である)とのアドバイスを著名文献の引用付きでいただき、どうにか回復できました。

数十年放置された厄介案件に可能な限り適正な形で決着を付けるため、改めて、理不尽に屈することなく、できる限りのことをするつもりです。

世間ではほとんど知られていませんが、相手方が何ら争っておらず、事件の内実や法の趣旨に照らして実益もないとしか思われない案件で、裁判官が、手続的に非常に重たい作業や理不尽としか言いようのない無理難題を強いてくることがある(しかも、それが、実務の大勢と異なる判断を前提としていたりする)ことは、弁護士等なら多少はご存知かと思います。

もともと裁判所には、救済=権力発動を求めてくる人間に対し、あれこれと注文を付け、とことん虐め抜いて、その上で裁判官が満足できた(これ以上、ケチを付けようが無いと判断した)場合に限って、ようやく救済を認めるというような「完璧を期すという名の下の、陰湿ないじめ体質」のようなものがあるように感じています。

その背後にある「司法消極主義」は、もしかすると、司法の謙抑性などという綺麗事ではなく、「江藤新平(司法の頭目)が大久保利通(行政の頭目)に斬首される」という形で、日本の司法部門が発足時に酷い目にあったことなども根底にあるのかもしれません。自分達が虐待されたから国民も・・などと、つまらないことを言いたいわけではありませんが。

もちろん、争いのある本格的な刑事事件の立証責任のように、裁判所が厳しい姿勢で臨むからこそ社会の適正が保たれる場面も多くあることは確かでしょうから、結局は、厳しく対応すべき場面と緩やかに対応するのが望ましい場面を適切に使い分ける姿勢を、もっと裁判所に持っていただきたいという点に尽きるのでしょう。

ともあれ、一部の裁判所・裁判官が、法や制度の趣旨に照らして疑義のある過大・不相当な負担を強いてくる「手続的虐待」とも呼ぶべき光景については、現代社会における司法部門のあり方がそれでよいのかという観点から、もっと広く知られたり、議論があってよいことではないかと思っています。

また、裁判所が行う特定の取扱自体は正しい(やむを得ない)のだとしても、その取扱(考え方)が世間はおろか業界一般にも事前に告知されておらず、従前に認められていた方法で提出したところ、不意打ち的に「そのやり方は認めない」という取扱を裁判所が平然と行ってくることにも、強い疑義を感じます。

まるで、一部の権力者が「現在、通じる手法」の知識ないし決定権を独占し、限られた人間(自身に靡く者?)だけに提供しているような印象すら受けますが、そのような光景は、国民主権や法の支配の理念に悖るものというほかありません。

他ならぬ裁判所で、そうした光景が当たり前のように繰り広げられていることに暗澹たる気持ちを抱かざるを得ませんが、努力と執念で乗り越えていく以外に、そうした実現する方法も存在しないというのが、現実なのかもしれません。

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ところで、私の個人的な趣味である「替え歌」をしばらく投稿していませんが、近日中に、渾身の大作の発表を予定しています。

可能であれば、原著作権者の許諾をお願いし、相応の経費を投じてでも世に問うてみたい(その価値がある)と思っている作品です。

いっそ、弁護士を辞めて、芸能界に打って出てもよいかもしれません(笑)。

ただ、私には、そうした作品を世に送り出すためのノウハウ等が全くありませんので、ご覧になった方で賛同いただける方がありましたら、その際に、業界筋の方にもお声がけいただければ?幸いに思っています。

ともあれ、乞うご期待!?

担保権抹消登記訴訟の光景と裁判所のIT執務環境のいま

今回は、裁判官と仕事のことで互いに愚痴を交わした話です。

近年、マチ弁にご依頼がある仕事の類型の一つに「自分の所有地(相続含む)に昔々に設定された担保権登記を抹消して欲しい」というものがあります。

売買の必要から依頼される方が多いですが、ご自身の代で解決しておきたいと仰る方も珍しくありません。

担保権自体は、完済の証明などができなくとも被担保債権などの消滅時効により抹消の請求が認められることが通例で、それだけを見れば、弁護士にとっては楽な仕事のように見えます。

ただ、数十年前に設定された登記名義人が現在も存在しているのかという問題があり、その点で余計な作業や経費が色々と生じる(ので、複雑な実務知識・理解も問われる)のが通常です。

概ね、①担保権者が個人で、相続問題が生じた=相続人を調査し全員を被告とする訴訟、②相続人調査が不能で、その旨を証明し公示送達、③法人だか遙か昔に代表者が死亡済み=特別代理人の選任が必要、のいずれかが多いかと思います。

が、先般、聞いたこともないA農協を抵当権者とする登記(昭和50年設定)の抹消の依頼があり、法人登記事項を調べたところ、A農協が平成4年に解散し、当時10人近くいた理事の全員が清算人となり、代表清算人の定めがないことが分かりました。

そこで、農協って代表理事の定めがあるはずでは(その人の生死だけ調べればよいのでは)?と思って調べたところ、手持ちの書籍に、当時の農業協同組合法が代表理事の定めがなく、平成4年(だったか)に代表理事制度が導入された(施行は後年)ので、平成4年に解散したA農協は理事全員が清算人となり、全員が代表権を有する=全員の生死を調べなければならないことが分かりました。

結局、2名の方が存命だったので、年若のB氏(90歳位)を被告代表者に表示して訴状を書き、併せて、訴状送達の際にB氏のご自宅にも「これは当方の登記のためだけの訴訟なので、無視しても大丈夫(何の不利益もない)です」と説明の手紙を出すことにしました。

すると、訴状提出後、裁判所(担当書記官)から、「当時の農業協同組合法に代表理事制度がないことなどを証明せよ」との連絡がありました。

私としては、「法令調査って裁判所の職責じゃないのか」と疑問に感じましたが、ともあれ、本にこう書いてありました、だけでは実務家失格なので、仕方なく、当時の農協法の定めを書いたものがないか、調べることにしました。

・・・が、これ(改正前の昔々の法令調査)が案外大変で、結局、深夜にWebをかなり彷徨った挙げ句、日本法令索引なる著名サイトであれこれ検索し、農業協同組合法の制定時の条文と平成4年改正(代表理事導入時)の条文を見つけて、裁判所に報告しました。

深夜の作業で心が荒んだせいか、報告書には、

「なお、法令調査は裁判所の職責である(外国法や条例、慣習法などはともかく法令は証明の対象とはされておらず、この点は改正前の法令も同様である)との認識ですが、改正前の法令の存在につき当事者に立証責任があるとの文献等があるのでしたら、ご教示いただければ幸いです。」

と、余計な一言を添えるのを忘れませんでした。

すると、裁判官から電話があり、

ご指摘はもとより承知していますが、裁判所は今もWebの利用に制限が大きくて、このサイトを調べたり改正前の法令調査を行うのが大変で、すぐ分かるようなら教えていただければと思ってお願いした次第なんです。

と、丁重なご連絡をいただきました。もちろん、当方提出書面でOKとのことで、その後はサクサクと進み、無事に完了しました。

昨年頃から、裁判手続のIT化などと称して多額のカネと手間を掛けている割に電話会議がTV会議になっただけではと感じる程度のやりとりを拝見して残念に感じていますが、裁判官や書記官などの執務環境のIT整備(や昔から散々言われているエアコン問題の解決)の方が先決なのでは?と思わないでもありません。

結局のところ、他省庁に比べ政治力のない(司法官僚さん達もその種の作業に関心が無い?)司法部門の残念な現実というほかないのかもしれません。

ご近所の「倒壊寸前で飛散リスクのある危険な家」への現行法での対処と法整備の必要性

先日、モーニングショーで「八王子駅前にある、倒壊寸前で飛散危険が濃厚なのに頑なな高齢?姉妹が居住し悪臭被害などを生じさせている家」を特集しており、空き家ではないので現行法では対処が困難だ、近隣住民への迷惑行為を理由に逮捕しても解決にはならないよね、とまとめていました。
https://www.j-cast.com/tv/2021/03/23407797.html?p=all

理屈の上では、現行法でも、社会通念上、通常ありうる程度の風水害(数年に1回程度の台風とか?)で建物が飛散し我が家に突き刺さる(人に当たる)程度の危険があることを立証できれば、その危険に晒される方(近隣住民)は、物権的妨害予防請求権等を根拠に、その危険を除去するため必要相当な工事(撤去も?)を民事訴訟で求めることは可能なはずです。

具体的な立証手段としては、上記内容を説明した建築ないし風水害の専門家の意見書などということになるのではと思います(具体的に見たことがあるわけではないので、抽象的な説明でご容赦ください)。

ただ、そのような前例があるかと言われると、ちょっと聞いたことはなく、この種の一般条項の適用に関する訴訟となると、世間の強力な後押しなどがないと裁判所が非常に慎重な姿勢を示すことも、容易に予想されるところです(この事案でも、弁護士に相談し同種の説明を受けた方が現におられるかもしれません)。

その上で、常識的に見て、そのような高度な負担を近隣住民(たまたま近くに居住等しているに過ぎない人)に強いることが適切とは思われませんし、駅前の歩行者など膨大な利害関係者がいるのですから、行政が動くべき事案であることも、誰もが感じるところではと思われます。

結論として、建築基準法などを改正し、「通常の風水害でも倒壊・飛散などの危険がある水準の構築物(一定程度以上の安全性すら満たさない構築物)は、自治体が支障除去の改善・措置命令を下すことができ、それに従わない場合は代執行も可」という法律(具体的な基準は構築物の内容・性状等に応じた専門家の適切な知見に基づく)を作る必要があると思われます。

番組で取り上げられた八王子の事案は時価7000万円相当の土地とのことで(事案の内容からも恐らく無担保でしょう)、それだけの価値があれば代執行費用を担保とした仮差押など?を通じて費用回収は容易でしょうし、売得金などで費用を回収することを前提に、本人に一定の補償を行い、行政が物件自体を収用することも検討されてよいかもしれません。

条例で定めてもよいのではと思われますが、憲法訴訟を覚悟の上での制定となるでしょう。

ともあれ、この種の報道をご覧になる方は、「話し合いで解決すべき問題」で終わらせるのではなく、「立法の不備」の問題と理解いただき、話し合いでの解決を促すためにも武器としての適切な法律が設けられるべきだ、と政治家その他の方々に働きかけていただければと思っています。

私は現在、盛岡市内にある数十年放置された「台風で飛散等の危険のあるバラック(の敷地)」を相続で取得した方の依頼で、そのバラックを法律上の理由なく占有し延々放置している方(先方は、被相続人からの贈与や時効を主張)に明渡請求訴訟を行っており、先般、概ね認容の判決を受けたものの、先方が控訴したため、第二ラウンドに移行したという案件を扱っています。

依頼主は周辺への被害防止のためにも勝訴後は直ちに撤去等を実施したいと希望しており、そのためにも迅速な解決を目指して闘っているところです。

震災の際にも、津波ではなく内陸(一関など)で「隣の壁が倒壊するなどして被害を受けた」と何度か相談を受けたことがあるほか、雪国では「隣の雪で被害を受けた」云々の相談を受けることが頻繁にあります。

これらも基本的に上記と同じ問題と理解しており、すべて法律等を適切に整備すれば大幅に改善できることだ(反面、その整備がなされていない現状では、弁護士の力だけで希望を実現するのは困難)と感じています。

関係者及び国民全体の奮起と現代の感覚に即した公私の調整を行う土地法制の再構築の議論が盛んになることを願うばかりです。

 

Web上の誹謗中傷に対処する制度の改善を巡る動きとIPアドレス開示等に関する4年半前の提言

現在、Web上の誹謗中傷が大きな問題となっている女子レスラーの方の件については番組等を拝見していないので詳細を存じませんが、そこまでの規模ではないものの、同種の問題については、数年に1度ほど、相談等を受けることがあります。

ただ、被害者から投稿者への責任追及となると、投稿者の特定のため最初に必要となるIPアドレスの把握(仮処分など)に時に容易ならざる面があることが災いしてか、未だにほとんど取扱経験がありません。

IPアドレス開示のための法的手続(仮処分)については、サイトによっては外国が絡んだりするなど色々とハードルや問題があり、現在も東京の限られた弁護士さんでないと対応が難しい面はあろうかと思います。

IPアドレスを通じて投稿者の契約先プロバイダさえ分かれば、その後の手続はフツーの町弁でも対応可能だと思っていますので、もし、今回の残念な事件を機に、制度の改善が図られるのであれば、この「入口」の件について、簡易迅速にサイト運営者側から開示を行うための法制度を講じていただきたいと思っています。

この点、5年近く前にツィッターのなりすまし被害の相談を受けた際、当該サイトは外国企業が運営している関係で法的措置に幾つかの難点があり、その克服のため次のような制度を導入してはどうかとブログで述べたことがあります

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①被害者が警察や弁護士などに適切な申告を行い、警察などがサイト運営者に開示するよう要請すれば、直ちに開示する仕組み・慣行を整備する

②他の方法として、被害者からサイト側にアドレス開示要請があれば、サイト側は特定の行政機関(消費者庁など)に投稿者のIPアドレスを直ちに通知するものとし、その上で、行政機関が被害者へのアドレス開示の是非を判断する(却下されれば、被害申告者は行政手続で開示を求める)。

サイト側が行政機関の要請に従わない(通知しない)ときは、行政機関はサイトの閉鎖命令ができる(ので、通知制度の実効性が担保される)。

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他方、投稿者の賠償責任についても、以前に投稿者側から相談を受けて色々と調べたことがありますが、判例検索で出てきたのは、かなり込み入った事情のある特殊性の強い案件が多く(そのため、高額になりがち)、この種の投稿の典型と思われる「ちょっとした私怨・不満を晴らしたくて、Web上で他者の悪口を書いた」とか「Web上で誹謗中傷が横行している人の件で便乗して自分も少しだけ悪口を書いてみた」というケースで、どの程度の金額が通常なのかという相場観が判然としないと感じました。

また、既述の理由から、現在の法的責任追及には高額な調査費用が避けて通れない面がありますが、その費用負担という問題もあります。

そのため、被害者側だけでなく、加害者側も落差が大きい(たまたま見つかった人だけが不相当に高額な賠償負担を負わせられやすい)面があるのではとも感じています。

不正投稿を行った人の全部又は大半に、社会通念上適切な法的責任を果たす仕組み(被害者が重い負担を負わなくとも加害者を特定しやすい仕組み)を整えると共に、それを前提に、実害が乏しく第三者から見れば軽率との非難で足りるようなケースでは加害者側の責任も過度に重くなりすぎないようにすること、また、早期・確実に責任が問われることの周知などを通じて肝心の抑止力を高めることが、求められているのではと思われます。

引用ブログは4年半前の投稿ですので、現在では通用しない(前提などが異なっている)記載もあるかもしれませんが、参考にしていただければ幸いです。

併せて、実名・匿名の区別のあり方(匿名投稿を誰もが自由に行うことができる現在の状況が良いのかどうか)、開示(ひいては賠償責任)を要する誹謗中傷と、そこまでの必要は認めがたい正当な批判や軽微な揶揄の類との線引きなどについても、議論が深められることを期待しています。

リアル・エロティカセブンの詩とコンビニ報道の課題

金曜の朝のワイドショーで「変態コンビニ店長」が取り上げられているのを見ましたが、すぐに思い浮かんだのは、平成5年に放送された「悪魔のKISS」というテレビドラマの主題歌でサザンオールスターズが歌っていた「エロティカ・セブン」という享楽的な印象の強い歌詞の曲でした。

この番組は、常磐貴子氏の「出世作兼問題作」としても有名で、当時は大学2年くらいだった私も運良く?放送を拝見した記憶があるのですが、残念ながら録画しておらず、あとで悔やんだことは申すまでもありません。

同日中の報道で、予想どおりというべきか、コンビニのオーナー(フランチャイズ契約の当事者)でもある店長氏は契約解除(解約)と閉店を余儀なくされたという報道が出ていましたが、洗濯物を干しながら「モンダイの映像」をチラ見した限りでは、孤独な中年おじさんの悪ふざけの悲哀という印象もなきにしもあらずで、被害者の方々はともかく第三者的にみれば、こんなことにならずに済む方法はなかったのかなと思わずにはいられない面はあります。
https://www.asahi.com/articles/ASL9P3S0CL9PUUHB00C.html

そんなわけで?久しぶりに「替歌の神様」が降臨し毎度ながら投稿せずにはいられなくなりました。

ただ、事件自体が報道直後に一気に収束したことなどを踏まえ長期の掲載は望ましくないと判断し、替え歌そのものは掲載の数日後に削除しました。この件に関心があり、どうしても見てみたいという知人の方がおられれば、個人的に楽しむ範囲内での提供は構いませんので、個人的に連絡して下さい。

もちろん当事者の方々(コンビニ本部を含め)を誹謗等する意図は微塵もなく、あくまで元ネタ(原曲)を思い出した方々にあの頃やドラマを懐かしんでいただければという趣旨ですので、ご容赦のほどお願いします。

ところで、ここまでの報道を見る限り、店長氏の奇行の原因や背景について触れたものは見かけませんでしたが、単なる「キャラの問題」だけに片付けることなく何某かの深掘りのある報道があっても良いのでは、と少し残念に思いました。

本件と関係があるかは全く分かりませんが、コンビニの零細経営者は長時間労働などの過酷な環境に置かれる方が少なくないとも言われており、そうしたものが本件にも関係しているのなら、何らかの報道があってよいと思います。

また、相当以前から地域内で問題視されていたとの報道もあり、どうしてそれが本部などに発覚せずに放置されていたのか(ご家族なども誰も何もできなかったのか)という管理体制上の問題なども、これだけコンビニが「地域の公器」のような様相を呈してくると、社会の関心事として取り上げてもよいのではと思いました。

余談ながら、ドラマ「悪魔のKISS」は、多重債務や悪徳宗教、薬物など様々な社会悪が若い女性に降りかかり、辛酸の末にそれを脱して終了、というストーリーになっていましたが、よくよく考えると、人々がそうした被害に遭わないようにする(遭っている人を救い出す)ことも我々町弁の重要な仕事の一つなわけで、ドラマのような強烈な修羅場には立ち会ったことはないものの、あの事件は一歩間違えれば、と思う経験はそれなりにしているような気がします。

コンビニ業界についても、従事者の就労環境の問題から弁当廃棄(値引禁止)などの問題まで色々と改善されるべき論点はあるように思いますので、そうしたことも視野に入れた報道などを考えていただければと思いますし、我々も、そのことにもっと関わっていければと感じています。

ともあれ、報道によれば大変反省しているという店長氏も、必要に応じた治療的なものも含め、しかるべき法的責任を踏まえつつ、適切な再出発を図っていただければと思います。

尋問で決めゼリフを言いたがる華々しい?弁護士と、それが似合わない地味な奴

相手方関係者に攻撃的な態度で接するのを好む弁護士の中には、反対尋問の最後に、詰問調で責め立てるような質問を一気呵成に畳みかけるように行った上で、「証人は、こんなロクでもないことを言ってましたということで、尋問を終わります」などと、わざわざ決めゼリフを述べて締め括る人がたまにいます。

そうした尋問を格好良いと思うか何酔ってんだコイツと思うかは、好みの問題や聞き手の立場もさることながら尋問の巧拙・奏功次第であることは申すまでもなく、巧妙な尋問によって決めゼリフを言われてもやむを得ないほど証人が粉砕されてしまえば何も言えませんし、そうでなければ滑稽なものでしかありません。

先日の裁判で関係者の尋問があり、相手方代理人の一人である新人弁護士が当方の担当者への反対尋問でそうした挙に及んでいたのですが、弾劾が奏功したわけでもないのに無理にそうした「証人を誹謗する決めゼリフ」を述べていました。

さすがに裁判所も苦言を呈しましたが、私も、その御仁の尋問態度の悪さに対する腹立たしさもあり思わず大声で「そんなことは言ってない!」と叫んでしまい、かえって裁判長から「静粛に」と窘められてしまいました。

我ながら他人の稚拙な尋問は軽くあしらう老獪な姿勢が求めらるとは思っているのですが、人間的成熟なるものは遠い彼方のようで、「反省だけなら・・」の類の汗顔の至りです。

見苦しい決めゼリフではなくとも、相手方関係者に対する糾弾ありきの態度が強すぎて、単なる信用性の弾劾に止まらず、証人の証言を過度に歪めようとしたり、人としての尊厳を蹂躙しようとするような姿勢が垣間見える弁護士はそれなりにいますが、そのような方の中には別な場で「憲法擁護!」などと叫ぶ人もいたりしますので(もちろん、その種の方だけのことではありませんが)、色々な意味で残念な感想を抱かざるを得ません。

私は良くも悪くも朴訥な仕事しかできない地味系の町弁ですので、反対尋問では、相手方の主張に関する具体的な矛盾点や問題点の指摘に止めて、相手を誹謗したり当事者間の感情的対立を煽ることは極力差し控えるよう心がけており、それが、遠回りでも本当に憲法の本質=人間の個人としての尊厳を踏まえた紛争解決のあり方ではないかと信じて、徒に言葉を弄ぶことなく努力を続けたいと思っています。

まあ、単に私がパフォーマンスが不得手だということに尽きるのかもしれませんが・・

空家問題や「お隣さんから降って湧いた災難」の費用保険と行政支援

先日、法テラス気仙のご相談で、「隣の家の木の枝が越境して雨樋に落ち葉が溜まるなどの被害に遭って困っている」とのご相談を受けました。

それなら土地の所有者に切除請求(民法233条)すればいいじゃないかと思ったら、案の定というか、所有者はすでに亡くなり法定相続人は相続放棄したようだとの説明がありました。近時は、こうした「問題が生じているが、解決を申し入れるべき相手が誰であるか判然としない」というご相談は珍しくありません。

そのため、私からは、

①その問題を解決したいのであれば、所有者の相続人の調査(相続放棄したのであれば、申述受理証明書の交付要請を含め)を行い、その上で、相続財産管理人の選任を申し立て、選任された管理人に対し切除請求をするほかないこと、

②相続財産管理人の申立・選任の際は、当該所有者(被相続人)に十分な金融資産があることが判明しているのでなければ、相応の予納金の納付=自己負担が必要となること、また、選任申立も弁護士等に依頼するのであれば、一定の費用を要すること(フルコースで40~50万円前後?)、

③その上で、所有者が無資力(問題となる土地以外には資産がない)とのことであれば、管理人の同意を得る形で、自己負担で切除作業をするほかないこと、

④但し、その土地を売却して十分な現金が形成できるなら(管理人は職責としてそれを行う必要がある)、予納金の自己負担はなく、債権者として切除費用等を回収できる可能性があること、

を説明しました。ただ、毎度ながら、そうした問題を相談してくるのは高齢の方(しかもお一人)というのが通例で、ご自身では手間も費用も負担困難との理由で、そのまま放置(或いは、実害がないので違法を承知で仕方なく無断切除する)という展開もありうるのかもしれないとは感じました。

こうした問題に限らず、近年は「隣地に何らかの問題が生じ、当方の所有地(自宅等)に何らかの被害が生じているが、隣地所有者側にはきちんと対処できる者がいないというケースは、年々増加していると思います(上記のように死亡→全員放棄のほか、所有者が存命なれども「困った人」であるとか、所在不明、要後見状態(かつ後見人等の選定なし)といったパターンもあります)。

無縁社会・人口減少社会などと言われる現代では、そうした現象が生じるのは避けがたい面がありますが、その近所で生活する方にとっては、自身に何ら落ち度がないのに、突如、著しい手間と高額な費用を投入しなければ解決できない問題に直面することを余儀なくされるため、どうして自分が重い負担を強いられなければならないのかと、強い不遇感に苛まれることになると思います。

そこで、例えば、そうした問題に対象できる保険制度があれば、被害を受けている近隣住民は、保険会社に申請すれば、保険会社が代理人(弁護士)を手配して上記①の調査や申立を行い、相続財産管理人の予納金や被相続人が無視力の場合の切除費用も保険で賄うことができ、さしたる労力や出費を要することなく、一挙に解決することができます。

これに対し、そのような都合よい保険制度が簡単に構築できるわけがないじゃないかと言われるかもしれませんが、上記のようなケースでは、不動産の売却して十分な売得金が得られれば、その代金から上記の各費用の大半ないし全部を回収することも不可能ではなく、保険会社の「持ち出し」を抑えることができることができるはずです(保険金支払により債権が保険会社に移転するタイプの保険を想定しています。なお、ご相談の件は無担保でしたし、そうした事案では無担保が珍しくありません。むしろ抵当事案の方が、競売により買受人が対処してくれる期待が持てるとすら言えます)。

よって、保険会社側にもさほどリスクの大きくない保険として早急に導入を検討いただいてもよいのではと思われます。少なくとも、相続財産管理人の申立や管理人として実務を担う弁護士の立場からすれば、当事者が一定の経費と若干の手間さえかけていただければ、概ね確実に解決できると感じるだけに、そうした問題が長期放置されることなく解決に向けて進めることができる仕組みを整備して欲しいと思います。

単独の保険として販売するのはハードルが高いでしょうが、火災保険などに附帯する特約として少額の保険料で販売すれば、相応の加入は得られると思います。そもそも、上記のようなケースでは保険会社の持ち出しも大した額になりませんので、弁護士費用特約のように少額の保険料で十分のはずです。保険の対象範囲を、空家問題だけでなく騒音など生活トラブルに関するものも含めれば、かなりの契約者が見込めるかもしれません。

さらに言えば、そうした保険商品が世に出るまでには相当の年月を要するでしょうから、少なくとも上記のような「相続放棄された土地の売却で概ね債権回収ができる事案」に対しては、行政が当事者に費用支援する(その代わり、支援した費用は債権譲渡等により行政が直接に売得金から回収できるようにする)という制度(行政の事業)が設けられてもよいのではと思います。

相当の債権回収ができる(いわば行政が立替をするに過ぎない)事案なら税負担もさほどのものではありませんし、それが「お試し」的に行われ、保険料を払ってでも利用したいという層が相当にあることが確認されれば、保険制度に引き継ぐ(行政は撤退する)こともできるはずです。

なお、上記の制度を構築するにあたっては、現在は「自腹扱い」とされるのが通例となっている相続財産管理人などの申立費用も事務管理などを理由に優先回収を認める扱いにしていただきたいと思っていますし、そのためには、行政・保険業界と司法当局(家裁や最高裁?)との協議などが必要になるのではと思っています。

ここ数年、配偶者や子のない高齢・熟年の方が、自宅不動産+α程度の資産だけを残して亡くなり、親族が相続放棄するため、その物件の管理や権利関係の処理などが問題となる例は多く生じており、私にとっても相続財産管理人の受任事件は、成年後見関係と並んで、ここ数年では最も受任件数が伸びている類型になっています。

特に、冒頭の事案のように、やむを得ない相続放棄などにより管理者不在となっている空家が増え、それが社会問題となっているという現状にあっては、それにより被害を被っている関係者の自主的な努力にのみ委ねるのではなく、負担の公正な分配を確保し、ひいては予防などに繋がるような仕組み作りが問われていると思います。

余談ながら、少し前に、法テラス気仙の相談件数が減少し存続が危ぶまれているという趣旨の投稿を書きましたが、運営者たる法テラスのお偉いさん方も、例えば、今回のように「実際の相談事例をもとに地域社会に注意喚起や問題提起をするような記事」を担当弁護士、司法書士らに作成させ、それを月1、2回の頻度で、自治体の公報や地元の新聞などに掲載させるなどの努力をすれば、かなり違ったんじゃないのかなぁと思います。

少なくとも、私がこんなところでボソボソ呟いていても、社会を変えることは微塵もできないでしょうから・・

この日の気仙の山々は紅葉のピークに入り、里の彩りは11月上旬ころまで続くと思われます。皆さんもぜひ、お出かけになって下さい。

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